3.『四畳半ビョーク (作詞作曲:久住昌之)



「四畳半ビョーク」

ボクの彼女はビョークが好きで 朝もはよから聴いている
食後のまったりしたときぐらい 別のを聴きたくないのかな

ボクの彼女はビョークが好きで 風邪を引いても聴いている
二人で銭湯行くときも 下駄を鳴らして鼻ビョーク  

  あぁ、ビョーク ビョークさん  
  ニッポンの 東京の 東中野の 四畳半  
  あぁ、ビョーク ビョークさん  
  カワイイあの子の胸の奥まで  アナタのソウルが届いてる

ちょっと苦手さ ビョークの顔は 少女と老婆が混じったようで
とてもボクの手には負えない まるで北欧の魔女みたい

だけど最近影響されて 知らずにボクも歌ってる
だけど布団でビョークを歌う 男と女もどうかと思う  

  でも ビョーク ビョークさん  
 
ニッポンの 東京の 東中野の 空の下  
 あぁ、ビョーク ビョークさん  
  カワイイあの子の心を借りて  ボクにもアナタがわかります  
 
  あぁ、ビョーク ビョークさん  
  星が降る 冬の夜 東中野の 窓明かり   
  あぁ、ビョーク ビョークさん  
  彼女がホントに好きなんです  彼女がホントに好きなんです


  ボクは中学一年の時、フォークブームによってギターを持った。1971年です。
 遠藤賢司、吉田拓郎、 岡林信康、ニール・ヤング、ボブ・ディランが好きだった。
 もちろんロックも聴いたけど、なんたって自分ひとりでもできるフォークに夢中になった。  
 
  ボクが中3か高校1年の時、荒井由美a.k.a.ユーミンが登場した。これはショックでしたね。
荒井由実の新譜「ミスリム」の一曲目を 聴いた瞬間に
「あ、日本の歌謡曲、いや日本の音楽が変わる!」
と、仙川の商店街のレコードショップで 確信した、その気持ちを今でも忘れない。  

  たぶん「四畳半フォーク」と言う言葉を作ったのはユーミン周辺だと記憶する。  
  つまり弾き語りのフォークというのは、四畳半風呂無しトイレ共同のアパートに 住んでる連中が
シコシコ部屋で作っちゃ歌ってる感じでなんともビンボー臭い、お洒落じゃないというわけだ。
 実際そういう部分も多く、スルドイところをついた言葉だった。 「ひとりでもできる」がビンボーだ。 
  今でこそオヤジに「名曲」と言われてる、南こうせつとかぐや姫の「神田川」に歌われる同棲なんて、
銭湯に行くのに「石鹸カタカタいわせてた」なんて 、
ユーミンの「中央フリーウェイ」の洗練されたスピード感に比べたら、
そりゃもう貧乏臭くて恥ずかしくて、そんな男と すぐ別れて 、そんな話自分の人生に無かったことにしたくなるだろう。  
 高田渡、シバ、友部正人、加川良、なんてのはモロ四畳半フォークと言う感じになり、 それから苦しい時代に突入した。  
 ただ自分からいち早くそういう世界から抜けた岡林信康、  
フォークブームにいながら実は最初からエンケン純音楽を貫いていた遠藤賢司、
同じく最初から生ギター一本でも洗練されたポップかつヘンテコな詞だった井上陽水、  
歌謡曲寄りにいながら「俺は違う」という姿勢でい続けた吉田拓郎、  
タレントになることで生き延びた泉谷しげるは「四畳半組」にならずにその時代を抜けた。  

 さて、ところが時代はまたまた巡るもので、90年代になると、「ゆず」なんてのが 出てきてヒットを飛ばしたり
「ネオアコースティック」なんて呼ばれるジャンルが 若者に広く支持されるようになった。
何のことはない四畳半が路上に出ただけだ。  
  でもそうして弾き語りフォークは見直されるようになり、高田渡の歌声がCMで流れ、
その素朴な歌とシンプルなサウンドが大きく受け入れられるようになった。  

  ボクはフォークに夢中になって、それからそんな自分が恥ずかしくなり、
そしてまたフォークが受け入れられるようになる一回り20年を見てきた。  
  今回のアルバムを作るにあたって、フォークを基盤にしようと思ったのは そういう自分の原点回帰でもある。
 そして中学生以来、ありとあらゆる音楽を吸収して、 自分の中で弾き語りフォークが、
どういうふうに熟したかを表現しようと思ったからです。  
 
  そういうわけで、「フォークから一番遠い人」をテーマに、現代の四畳半フォークを やろうと思ったのがこの歌。
ボクが考えたその人がビョークでした。全然違うイメージをぶつけるのは、単に面白いから。でも面 白い歌は強い。
  アイスランド出身で、唯一無二のヴォーカリストにしてミュージシャン、Bjorkです。  

  実際にGOCCIは、京都から上京して初めて住んだのが東中野だったそうで、
しかもビョークが大好き、しかもフォークも大好きということで、イメージはすぐできた。  
  これは、2006年の冬の東中野の四畳半で、ビョーク好きな彼女を想っている気持ちを、
宇宙からながめたフォークソングであります